取材 トッティ 大宮
第40回 〜新春特別企画〜
グアムサッカーナショナルチーム総監督 築舘範男さんインタビュー
                        (前編)'06 1/20

「競技としてのサッカーを確立する、
     それが私のグアムでの使命です」

image  日本サッカー協会から派遣され昨年2月にグアムサッカーナショナルチーム総監督に就任した築舘範男さん。日本での豊富な経験をもとに選手強化、指導者育成や協会運営へのサポートなど忙しい毎日を送っています。もうすぐ就任約1年、今回は前編としてこれまでの感想などを中心にお話を伺いました。

もうすぐ就任1年ですが、率直な感想をお聞かせください。
 ズバリ、ギャップを感じた一年でした。もちろん就任以前にある程度予想はしていましたが実際現場に立つとそれは全く違うものでした。

具体的にはどのようなことですか?
 グアムはサッカーにおいては発展途上のエリア、もちろん選手達はサッカーが大好きで「うまくなりたい!」という気持ちはよく伝わってきます。しかしまだ歴史も浅く、選手も関係者も競技としてのサッカーを理解していません。それにはまだまだ時間がかかるかもしれません。

グアムの気質とも関係があるのですか?
 そうだと思います。ご存じのようにグアムの人はとてもおおらか、フレンドリーで優しい反面きびしさは足りないかもしれません。それにはもちろんいい面もたくさんあります。普段の生活では時間にルーズでも「グアムタイムだから」と許せることもあります。しかし競技で強くなるにはやはりきびしさが必要なのです。

個人的にはグアムに来ていかがですか?
 グアムに来てすごく良かったと思っています。日本を離れ新たな経験を積むことにより人間としての幅がどんどん広がると思います。多くのサッカー関係者はその先を南米やヨーロッパと考えているようですが、私は純粋にサッカーが好きなグアムの選手達と毎日汗をかきながら貴重な時間を過ごしていると思っています。

さて、ズバリグアムサッカーに必要なものは何ですか?
 一番はやはりお金だと思います。選手のやる気や指導者の情熱ももちろんですが、現実的にはやはり強化のためにはお金をどう捻出するのかがとても大切なのです。今のグアムサッカーは選手も指導者も全員アマチュア、仕事をしながらサッカーをしているのです。

具体的には?
 まずサッカー協会がナショナルチームとその選手達を拘束することができません。グアムのサッカー選手は代表といっても全員アマチュア、みんな生活のために仕事を持っていて、都合によって大切な試合や練習に参加してもらえないことも多いのです。また、協会スタッフやコーチについても役割分担、責任をはっきりさせにくい現状があります。「ボランティアだから」といわれてしまえば何も言い返せません。理想は少なくとも会長と各部門の責任者はフルタイムでサッカーの仕事に専念してもらうことです。給料を払うことで精神的にも時間的にもサッカーに専念してもらえる訳ですから。

現実には非常に財政は困難ですね。
 昨年からいくつかの企業がグアムサッカーのオフィシャルスポンサーとなりました。しかしまだまだ充分ではありません。ちなみにJリーグのあるチームでは年間数十億円もの運営費がかかると言われています。

それではグアムサッカーのお先は真っ暗ですかっ?(by トッティ)
 そんなことはありません。日本だってまだJリーグ発足前の日本リーグの時代は今のグアムと一緒で全員仕事をしながらサッカーをしていたアマチュアの時代があったのです。お金がなくても情熱を持った人間が私のまわりにもたくさんいました。その時代を経て今日の日本サッカーがあるのです。

グアムサッカーは日本のように強くなりますか?
 先にも言いましたがグアムの人はおおらか、そして家族愛をとても大切にしますね。優しい両親は子供を甘やかし、子供は親を尊敬し素直に甘えるといった具合に。強くなるためのメンタリティは残念ながら日本に比べて低いかもしれません。でもその家族愛、健全な親子関係はすばらしいもの、私は否定しません。むしろ現在の日本では失われつつある大切なものとして受け止めています。それを理解した上でグアムで競技としてのサッカーを確立すること、それが私が日本サッカー協会から派遣された使命だと思っています。

築舘監督、ありがとうございました。次週はこれからのグアムサッカーについて伺います。お楽しみに!

築舘 範男(つきたて のりお)さん

1960年生まれ。愛知県立豊田西高校卒業後トヨタ自動車工業入社、日本リーグでプレー。その後同社コーチを経て92年名古屋グランパスエイトのトップコーチとして同チームをナビスコ杯3位に導く。同チームユース強化責任者、スカウトを経て日本文理大学付属高校(大分県)監督として高校生を指導。2002年より清水エスパルス・ユース監督として02Jユース杯 ベスト8、03全日本クラブユース選手権U18 3位、03プリンスリーグ東海 優勝、03高円宮杯 ベスト8、03Jユース杯 3位。トップコーチとしての経験はもちろん、ユース(若手)の育成の経験も長く、上記のような具体的実績を残している。